M&Aの手法には株式譲渡の他に事業譲渡があると理解していますが、それぞれの手法のメリットとデメリットをお教え頂き、実務上どのように使い分けられているかお教えください。
Q&A 詳細
- 2018.10.09
- Q&A
- 入門
事業譲渡と株式譲渡の違い
Q |
|
A |
M&Aの手法には株式譲渡と事業譲渡があります。近年では会社分割や株式交換などの組織‥‥‥ 表示には会員登録(無料)が必要です。
M&Aの手法には株式譲渡と事業譲渡があります。近年では会社分割や株式交換などの組織再編を使った手法もありますが、各種再編も株式譲渡的な行為と事業譲渡的な行為に大別されます。 まず、株式譲渡については株式の譲渡のみで会社の全ての権利義務を取得することができるので非常に簡便であり、M&Aは基本的にこの手法で行われます。対象会社に過去の税務繰越欠損金がある場合も、原則としてそのまま引き継がれます。ただし、対象会社に簿外債務がある場合、買手が引き継いでしまう点が最大のデメリットとなります。また、買収対価が対象会社の純資産を上回る、いわゆるのれん部分について株式譲渡では損金算入することができない点も事業譲渡と比較した場合のデメリットとなります。 次に事業譲渡ですが、事業譲渡は個別の資産や契約の移転手続きが必要となりますので手続きが非常に煩雑です。全ての契約について事業の譲受け主体が相手先と締結し直す必要がありますし、従業員との雇用契約についても本人の同意を得た上で個別の転籍手続きが必要になります。反面、取得する資産を取捨選択できますので対象会社が複数の事業を行っている場合に一部の事業のみを取得するケースや、事業以外の私的な資産を保有している場合に事業用資産のみ取得したいというケースに適しています。また、原則としては簿外債務の引継ぎを遮断できますので、簿外債務が存在する可能性の高い経営不振企業の再生案件などでは事業譲渡を活用するケースが多く見られます。 税務的な観点からは、繰越欠損金が引継げない一方でのれんが損金算入できるメリットがありますが、対象会社が不動産を所有している場合、不動産の移転に不動産取得税や登録免許税が課税されるデメリットがあります。 以上が、株式譲渡と事業譲渡の概要となります。株式譲渡をベースとしつつ対象会社の全ての権利義務を引継ぐことに何らかの不都合がある場合、事業譲渡の採用を考えるという流れになります。 |
解説者
- 宮口 徹 /公認会計士、税理士
- 宮口公認会計士・税理士事務所 代表
- M&Aアドバイザリー、スキーム策定、バリュエーション、ベンチャーM&A、事業再生、事業承継型M&A、事業承継対策、税務全般、組織再編成、財務税務DD
- (ご注意)
- 掲載情報は、解説作成時点の情報です。また、例示された質問のみを前提とした解説となります。類似する全ての事案に当てはまるものではございません。個々の事案につきましては、ご自身の判断と責任のもとで適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い申し上げます。
- 当社および本サービスに情報を提供してい各専門家は、本サービスに掲載されている情報の正確性については万全を期していますが、本サービスの情報の利用に伴い、利用者に不利益や損害が発生した場合であっても、当社および当該各専門家はその責任を一切負うものではありません。
質問には会員登録(無料)が必要です。